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BARKS
SUGIZOが、“今、自然再生エネルギーを利用して我々音楽家が出来ること”をテーマに、自然再生可能エネルギーの可能性を、建機、ソーラーパネル事業を営むWWB株式会社の伊藤淳氏ととも語るインタビュー。ここではこのインタビューの後編をお届けする。
◆ ◆ ◆
◆僕的には楽器のチョイスをするように電力のチョイスをしたというに過ぎない。
自分の表現を最も良い状態で出すためのエレメントのひとつなんですよね。
──こんなに業界や政治批判的なことを書いちゃって、原稿赤線だらけで戻ってきませんかね?
SUGIZO:大丈夫なはずですよ!今でこそ大きなメディアになってますけど、もともと編集長も反骨精神やアウトローな発想からBARKSを立ち上げている人なので、気持ちは僕らと近いところにあるはずです。
伊藤:太陽光に関して、日本のSHARP、京セラ、Panasonic等は、半導体から出た廃材等を再利用してパネルを作りましたというような成り立ちなんだけれど、ドイツのQセルズという世界最大の太陽光発電メーカーは“原発ふざけるな!”と普通に発言出来ているんですよ。チェルノブイリでの経験を2度としたくないというのがあって、真剣に太陽光で世の中を良くして行こうと思っているんです。ドイツのソーラーメーカーはそこまでの強い想いがあったから、世界一になれたんだと思うんです。一方日本のソーラーメーカーにはそうした思いがないんですよね。ソーラーを本気で広めて行こうと言う意思が感じられない。
──そもそもが日本の電気メーカーは原発に加担しているメーカーですよね……。
SUGIZO:同時に日本の企業や夢や想いと言うのが置き去りになって、利益追従型になってしまっているからではないんでしょうかね? でも、昔のPanasonicやSONYにはそういう情熱を感じれたんですけどね。
伊藤:当時の起業家たちはそういう熱い想いを持ってたんですよ。
──では、何故そういう想いの起業家たちが今の時代にいなくなってしまったんだと思いますか?
伊藤:完全な資本主義、金融が世の中のすべての決定権を握ってしまったからだと思います。お金を持っている人が物事を全て決めてしまう世の中なんです。ベンチャーキャピタルなんかは、まさに最たる例で、お金持ってるヤツがアイディアを持っている人からそれを買って、転売してどんどん大きくして最終的にはアイディアを出した人には何も残らないようなシステムになってしまっている。でもベンチャーというお金の出易い環境が在るから、そこに皆が頼ってしまうのは当然と言えば当然な流れなんだけれども、でも一方で屋台で地道に自分の出来る範囲からコツコツと育てて行くやりかたもあるはずなのに、大量生産したものを売りさばくようなやりかたで、使い捨ての経済が主流になって来てしまっている。資本主義と金融市場が決定権を持ってしまったからこのような社会になってしまっているんだと個人的には思っています。
SUGIZO:僕も同感です。資本主義というある種の強大な宗教に縛られてしまっている構造故だと思います。変な話、ある有名レコード会社もそうですよ。もともとは音楽を作って売るはずの会社ですよね!? でも結局一部上場してしまったがために近年は株主の顔色を伺いながら、彼らの意見をビクビクしながら受け入れて、彼らが言うがままのアーティストを育成したりしている状況のようです。もちろん、そういうことが受け手と創り手が一緒になってモノを創り上げて行く過程でのインタラクティブなことであればそれはそれで素晴らしいことなのですが、でもその会社の場合はそうは見えない。
伊藤:企業という場所ではずっとそういうことが繰り返されてきたわけですが、遂にアートの領域にまで金融の意見が入り込んで来てしまっていると言うことなんだと思います。
SUGIZO:ものつくりの現場ではそれはまだ許されると思います。ただ「作品」に対してはそういうスタンスを取ってもらいたくないですよね。
──音楽が「アート」ではなく、単なる消費される“商品”になってしまっているというのは残念ながら今の音楽マーケットを観るに理解出来ますね……。大分深い話で面白いのですが、一旦ソーラーのほうに話を戻しましょう。太陽光発電というのは環境視点のメリットで進んでいるということが往々としてある中で、一方ミュージシャンの立場としては嬉しい副産物もあったわけで「太陽光で作られた電気を使用すると音質が良くなる!」と、言われていますよね?
SUGIZO:これはとても嬉しいことですよね。
──実際に手応えは実感出来ていますか?
SUGIZO:もう以前の音の環境には戻れないね。それくらい素晴らしい音の鳴りです。考えてみれば当然で、電線を長い距離伝って届けられる電気には、途中でノイズや不純物も混じるし、放熱によるロスも多い。太陽光は目の前で作られたクリーンな電気をそのまま使っていると考えれば、採れたての新鮮な無農薬の野菜が栄養価も高くて美味しいのと同等のことだと思うんですよ。
──そんな味を知ってしまったら、何処のものだか良くわからない野菜はもう食べれない!というのと同じ感覚ですね。
SUGIZO:その場で形成された電気と言うのがこんなにも音楽の内容を左右するのか!という発見に驚きましたよね。でも考えれば当然のことだったんですよね。
──設置コスト等の面での課題はまだまだあると思いますが、今後はソロプロジェクトに限らず、LUNA SEAやX JAPANのアリーナクラスの会場でも太陽光エネルギーを使ったライヴをやりたいと当然お考えですよね?
SUGIZO:まだまだ難しいですけど少しづつ、そういう方向にシフトさせていけたらいいですよね。
──そうした意味においても、SUGIZOさんのソロプロジェクトは今後も太陽光エネルギーでのライヴが可能であると言うことを実践で経験を積んでゆくことで、周りのミュージシャンや関係者の皆さまににも興味や理解を持ってもらえるようになるための、プロトタイプ的活動をしていることになるわけですね。
SUGIZO:レコーディングスタジオやライヴ会場が独自に太陽光エネルギー給電を常設してくれれば、これはミュージシャンにとっても非常に有り難い環境になりますよね。
──それはそうですよね。毎回ライヴの度にソーラーパネルを持ち込むって、大変ですよ。そういうことで言うと、僕はArt of Partiesの前日にClub Asiaの屋上にパネルを設置出来るように、屋上のゴミを掃除したんですよ(苦笑)。
SUGIZO:そういうことで言えば、Zepp Tokyoは太陽光ではないですが、風力エネルギーを使用してるんですよね。なので、太陽光エネルギーに限らず、地熱、波力などの再生可能自然エネルギーをもっともっと広めて利用出来る環境になればいいなと思っています。
──そういうことが広まって行くにはまだまだ時間がかかるんでしょうかね?
伊藤:現状では新築を建てる時に設置するとか、企業が大規模な形で導入すると言うようなことが主流で、そうしたところだけでの需要で終わってしまう状況で。まだまだ道のりは遠いのだけれど、そうしたことをソーラー業界に技術進歩や単価が安くなって行くことを期待しているだけではなく、まずは自分たちの出来る範囲からでも始めてみるのが一番良いと思います。携帯電話の充電を出来るレベルの所から始めてみて、ソーラーエネルギーを実感してもらいながら、少しづつステップアップして自分たちでも勉強をして行って欲しいです。そうして行けばユーザーのニーズに答えてメーカーも様々なタイプのパネルや蓄電器を開発して行くようになるでしょうし。結局、ニーズがあるとなれば、メーカーは製品をそこに投入し始めます。
──さっきのSUGIZOさんの採れたての野菜という例にもありますが、それこそ家庭菜園のような感覚でプチトマトやハーブをベランダで育てるように、自分で出来る範囲の中、窓際で電気を育ててそれを使う!そんなことからだけでも何だか生活が豊かなものになって行きますよね?
伊藤:“自分は世の中が変わる迄太陽光エネルギーの導入を待つ”というのではなくて、自分たちから変わって行くべきなんです。
SUGIZO:ちょっとした志の高さ。皆がこれを持てるようになればいいですよね。電気は我々には絶対に必要じゃないですか?僕のようなミュージシャンとしては、まず楽器が必要ですけれど、それを鳴らすためには電気は絶対に必要なわけです。で、楽器の音質を良くする方法があるのであれば、その手段として太陽光を選んだ、というように、僕的には楽器のチョイスをするように電力をチョイスをしたというに過ぎない。という一面もあったりします。自分の表現を最も良い状態で出すためのエレメントのひとつなんですよね。
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