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BARKS
● 【ロングインタビュー】YOSHIKI「強行突破、必要ですね」
「ROCK IS DEAD」…YOSHIKIはアメリカでの音楽状況を一言でこう語った。もちろんこれはYOSHIKIの意見ではない。アメリカで語られている現在の米音楽状況を憂う悲しきキーワードだ。EDM全盛の中、X JAPANのニューアルバムの行方はどうなっているのか。それ以前に、YOSHIKIという音楽プロデューサーは、激しく様変わりを続けている現在の音楽事情をどのように見ているのか。
音楽の多様化という発展の20世紀を経て、音楽は所有する喜びから共有する楽しみへと、急速に変貌を遂げている。音楽産業が崩壊し既存のビジネスモデルを失いつつある音楽業界だが、皮肉なことに音楽に求められるエンターテイメント性はより加速し、音楽需要はまだまだ増大する傾向にある。粗製濫造は淘汰され、いいものだけが純粋に評価される健全な市場が広がる中で、ミュージシャンが音楽で食っていくことの難しさは年々厳しさを増しているようだ。この歪んだ構造は、いったいどのような帰結を見せるのか。
アルバムのこと、ライブのこと、作品作りのこと、アーティストが対峙する、リスナーには見えない陰のYOSHIKIにスポットを当てた。
■「いやいや、僕だって3分の曲も書くよ(笑)」
──音楽状況は大きく様変わり崩壊しつつある日本の音楽業界にあって、X JAPANのアルバムは今どうなっているんでしょう。
YOSHIKI:そのままの状況です。その後もずっとX JAPANなりViolet UKなり地道に続けてきているんですが…、アルバムの形態という点に1年位前から悩みはじめまして。
──というと?
YOSHIKI:例えば、2012年もロックアルバムはいろいろ出ましたよね。ミューズ、リンキン・パーク、グリーン・デイ…売れたし、それぞれ良いアルバムだと思いますし個人的にはみんな好きなバンドなんですけど、あまりパッとしなかったという思いがあって…。一石を投じたというようなアルバムではなかった。自分は、楽曲を作るのにものすごく日々も精力も費やすので、「出して良かったね」という結果では、自分の中では失敗なんです。出して何かが変わらなければいけないという使命感を持って作っているつもりなんです。そう考えたら…なんですかね、このままの状態で普通に出していいのかなって考え始めちゃったんです。そもそも、みんなただアルバムを求めているのかな?…と。
──重たい自問自答ですね。
YOSHIKI:Twitterで「どういうアルバムの形態がいいと思う?」ってファンに訊いてみたり、業界の人、エージェントの人、マネージメントにかかわる人たち…いろんな人から常に意見を聞いているんですけど、最近はだいたい「フルアルバムを聴くのはつらいよね」ってみんな言うんですよね。
──ここ近年の傾向ですね。
YOSHIKI:よほどのクオリティじゃないとアルバム全部は聴くに堪えないのか、それともクオリティ問わず、単純に長時間が辛いのか。そのアテンション・スパン…集中する時間というのが、昔より縮まっているのかなとも思ったりします。そんなことをずっと考えているので、今の時代に考える一番最高の形のアルバムを作りたいと思うと、これはEP形式、日本で言えばミニアルバムに近い形のようなもので、アルバムを2つくらいに分けてみたほうがいいんじゃないかと、思っています。
──レコーディングを始めた当初にはなかった発想ですね。
YOSHIKI:もともと1枚のアルバムというコンセプトで作っていたので、どういう風に作品を分けようか、だったらもう1~2曲作ろう…みたいな(笑)。まだ考えはまとまっていないんですけど。多分ここ2~3か月の間にまとめて方向を決めなければいけないので、いろんなリサーチをしながら自分の納得できるポイントを探ります。
──YOSHIKI自身も、いちオーディエンスとして音楽の聴き方が変わってきているという自覚がありますか?
YOSHIKI:ありますね。昔はLPの時代だったんで、片面聞いてひっくり返してもう片面を聴くという形だったんですけど、CDになって大きく変わったのはぶっ続けで聞けるということ。ここは画期的だった。でも今は、自分としても真剣にアルバムを最初から最後まで聞かないなと思って。結局ヒットしている曲をメインで聴いてしまっている。
──とりあえずプレイヤーにぶち込んでシャッフルで聴く人もたくさんいますよね。
YOSHIKI:あー、やりますね。
──“アルバム”という形は、そこに意味がなければ本当に意味がないものなのかもしれません。
YOSHIKI:そうなんですよね。そういう意味ではいかに客観的に自分を見れるかというのがひとつのポイントだと思うんです。今までがむしゃらに突っ走って、強引にやってきた面もありますけど、一方でいつも自分を客観的に見ている自分が居ます。
──自分をセルフプロデュースするということですか?
YOSHIKI:時には「YOSHIKIバカじゃないの?」とか「YOSHIKI何考えてんの?いい加減にしろよ」とか思ったりもするし、「良くやった!」と思ったり。YOSHIKIをプロデュースするもうひとりの自分がいる感じですね。そう考えると「アルバム完成間近だって言っているけど、そのまま出していいの?」みたいなプロデューサーの自分が現れたところ。
──そういう危機感が出てくるそもそもの発端は何なんでしょうか。
YOSHIKI:今ね、アメリカではロックが死んでいると言われる。
──R&Bやヒップホップばかりで?
YOSHIKI:あとEDMとかね。もちろんそれはそれで全然嫌いじゃないけど、ただもう少しロックが出てきてもいい。でもみんなは「ROCK IS DEAD」という。んじゃ、なんで死んじゃったのかなというと、ロックミュージシャンがポップミュージシャンに近付くか、真逆にコアなファンだけを対象だけに活動するのか、今はその両極に分かれちゃっている気がするんです。その中間ってあまりいないんじゃないかなって思って。その中間地に行くには、素晴らしく濃くしっかりとしたコンセプトを持った30分くらいの凝縮したアルバムを2~3枚出す必要があるんじゃないかな、という思いが強まっているんですね。
──サブスクリプションモデル(定額聞き放題サービス)はどう思いますか?
YOSHIKI:僕はいいと思うし、全然ありだと思います。YouTubeもそうなっていくと思いますし。iTunesはもちろん、ちゃんとそういう道に進んできているのかなという気もしますし、シングルというものが強調されていきますよね。そうするとなおさらアルバムの価値観が問われる。
──パッケージの制約がなくなった以上、作品のまとめ方自体に大きな意味が出てきますね。
YOSHIKI:本来、作った音楽によってパッケージの容量を変えなければいけないのに、今までは与えられたパッケージという制約の中でどんな音楽を収めるか、だった。ヒット曲がなぜ3分半かというと、そうじゃないとMTVで放送されないからでしょ?今はYouTubeを基準にすると3分でも長いと言う。みんな2分くらいの曲を見たがっている。そういうリスナー動向に敏感に反応しながらも、同時にどう振り回されないか…そこを戦っている感じですね。
──YOSHIKIらしい。
YOSHIKI:自分の中で一番心地よい表現したいものがあるわけで、その時代に反発して作ったのが「ART OF LIFE」だったわけですけど、それと同じことで、今この時代でどう反発…最高のものを出せるかということなんですよね(編集部註:ラジオオンエア、TVタイアップがヒットの重要要素だった1990年代に、1曲29分に及ぶ長編大作をリリース、60万枚を超えるヒットを記録したのが「ART OF LIFE」)。
──X JAPANに短い曲ってありますか?3分台の曲って…
YOSHIKI:短い曲ってあんまりないんですね。だいたい5~7分とかになっちゃいますよね。
──ラジオ・オンエアのこと、考えていないですね。
YOSHIKI:考えてないですね。ファンの人たちもそう思っているようで、X JAPANの曲ではないですけど、この前作った「ゴールデングローブのテーマ」、あれは短かったんです。3分47秒ありますけど、でも僕の曲にしては短いんで、みんなショートバージョンと思っているんですよね(笑)。「ロングバージョンがあるはずでしょ、出してください」って書き込みがいっぱい来まして。いやいや、僕だって3分の曲も書くよ(笑)って。
■「ガツン!ってくるのが欲しい」
──今、流行っている音楽、刺激的な音楽、YOSHIKIが影響を受けそうな音楽ってありますか?
YOSHIKI:一応まんべんなく、ヒットチャートにあるようなロックやEDMもそれなりには聞きますよ。自分でダウンロードもするしアルバムも買います。P!NKとか今回のアルバム良いなってレベルで買ったり。一通り聞いているけど、ただ、ガツンと来るのがあまりない…。
──多感な少年の時に出会った音楽って、いつまでも変わらぬフェイバリットだったりするわけで、YOSHIKIもそういう音楽を聴いてほっこりしたりするんですか?
YOSHIKI:むしろ危機感に感じますね。「そういうものを作んなくちゃいけない」という。
──ソングライターとしてのYOSHIKIが前面に出ますね。リスナーとしてのYOSHIKIの顔が全然見えないんですが。
YOSHIKI:なるほど、まーそうですね。単純に楽しむというのは…微妙ですね。楽しむときはクラシックを聴いちゃったりするから。
──(ロックに目覚めるきっかけとなった)KISS、聞いてくださいよ。
YOSHIKI:KISSですか?今は昔ほどの衝撃がないんですよね。でも一通り聞いてますよ。コンサートも、この前ブラック・アイド・ピーズも観に行ったし。でもなんか、ガツン!ってくるのが欲しいですよね。
──そういう衝撃体験は、オーディエンスも求めているんですよ。
YOSHIKI:そういう意味では、X JAPANとしては、<SUMMER SONIC 2011>とかは僕たちも刺激を受けましたよね。ある種アウェイ感もある中で。その後に出たのが<a-nation 2011>だったりするんですけど、両方とも刺激的でした。そういう意味では今回<OZZFEST JAPAN 2013>のオファーも頂いていたんです。いろいろ都合があって出れなかったんですけど、でもオズフェス系のメンツって、アメリカではもう固定されちゃっていて、メタリカ、メガデス、スレイヤー、アンスラックス、スリップノット…その連中が、今でもずっとメインなんです。彼らを超えてきているバンドが出てこないって危機感を感じますよね。
──ふむ。
YOSHIKI:何かがどこからか突然現れて、脅威に感じるようなバンドがないといけないんじゃないかなと思います。海外で言えば、自分たちは脅威にはなれないにしても、それに準ずるような部類になりたい…という作品をつくってやっていくべきと思っています。
──日本のアーティストも着実に世界に進出を始めていますよね。J-POP、J-ROCK、アイドル、KAWAII…やっと日本の音楽が世界に出ていける状況になりました。X JAPANはひとりで勝手に世界に出ていきましたけど(笑)。
YOSHIKI:日本文化に関しては体感していますよ。僕はアニメコンベンションやエキスポ…シカゴ、ニューヨーク、サンフランシスコ、ロサンゼルス、フランス…と、結構行っているので、じわじわ来ているのは感じています。どっかのタイミングでそれがぐわーっと来ないかなと思うんですけど。
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