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BARKS

http://www.barks.jp/news/?id=1000093732

 

●【インタビュー】INA、盟友だからこそ知る“未来人hide”の本質 。「当時から随分未来のことをやってましたからね」

 

hide楽曲の共同プロデューサーであり、hide with Spread BeaverのメンバーでもあるINAプロデュース&リミックスによるトリビュートアルバム第5弾『hide TRIBUTE V PSYBORG ROCK SPIRITS- CLUB PSYENCE MIX~』。ノンストップで完全クラブ仕様に再構築された全18曲からは、しかし、「今回は俺の好きなようにやってもいいかなと思って」という発言とは裏腹に、しっかりとhideの魂が感じられた。彼が思い描いた理想の音楽シーンを次々に具現化して行った、まさに盟友だからこそ知る真実。改めて“未来人hide”の本質に迫ってみた。

──『hide TRIBUTE V PSYBORG ROCK SPIRITS- CLUB PSYENCE MIX~』、僕はhide with Spread Beaverがクラブでライブをやっているような印象を受けたんですよね。

 

INA:それはうれしいな。最初は何人かリミキサーに頼んで、とかっていう話をしてたんだけど、松本裕士(hideオフィシャルマネジメント)から「INAさん1人でやったの作ってもらえませんか?」という要望があって、だったらコンセプト立てした方がいいなっていうことで、“CLUB PSYENCE”っていう、ずっとやってるクラブイベントのパッケージにしてみようかなって思ったんですよ。

 

 ──リミックスでありながら、見世物小屋の口上のような独特のMCに始まり、今彼が生きていたらきっとこんなライブをやっていたんだろうなって。

 

INA:実はhideの声が入ったオリジナルの音源って10年振りぐらいなんですよ。『JUNK STORY』とかあの辺が最後で、あとはベスト盤とかライブ盤とかだったんで、盤として彼の歌で音が新しくなってるっていうのは久し振りなんですよね。

 

──hideのライブに行ったことない人にはぜひ聴いてもらいたいですね。

 

INA:あ、そこはでも今まで僕がやって来たやり方とはちょっと違って、今回は「hideだったらどうしてただろうな?」っていうのじゃなくて、俺が好きなようにやっていいのかなって思って作ったんですよ。でも違和感ないでしょ?

 

──全然!! 「PINK SPIDER」のオリエンタルなイントロなんて……

 

INA:あれは俺も随分前からこういうイントロでやってみたいなって思ってて。

 

──「ピンク スパイダー」のPVってL.Aのホテルにhide with Spread Beaverのメンバーが集結して撮影されたじゃないですか?

 

INA:はいはい。

 

──僕もあの現場にいて、そこで「ピンク スパイダー」についてhideにインタビューしたときに、“どこまで飛んでもお釈迦様の掌の中にいるような感覚?”って言ってたのを、このリミックスを聴いて思い出しました。

 

INA:ああ、言ってましたね。

 

──口上についても訊いたことあるんですけど、“どこでああいう口上覚えたの?”って。“知らん!!”てひと言で返されましたけど(笑)。

 

INA:あはははは(笑)。たぶん普通にしゃべるのが恥ずかしかったんじゃないのかな?

 

──そういえば、ソロ活動を始めたばかりの頃は歌に関しても同じようなこと言ってましたね。

 

INA:うん。1枚目のソロアルバム(『HIDE YOUR FACE』)はクレジットが“ボーカル”じゃなくて“ボイス”だったからね。2枚目(『PSYENCE』)から“ボーカル”になったけど。やっぱり恥ずかしかったんじゃないのかな? あ、「ピンク スパイダー」に関してはhideは当時「アルバム(『Ja,Zoo』に入れるとき)はディストーションボーカルでいこうか?」って言ってたんですよ。でも結果的にシングルのまま入れたんで、今回はそれを10何年越しに実現しました。

 

──なんだかんだ言って、しっかりhideの意志を尊重してるじゃないですか(笑)。

 

INA:ね(照)。

 

──「Hi-Ho」のピアノも本当にD.I.E.が弾いてるような感じで。

 

INA:あれは何年か前に“CLUB PSYENCE”用に作っていたのがあって、俺の後輩のピアニストにピアノ弾いてもらって。それを今回また作り直したりだとか、「MISCAST」もね、当時PATA HEATHと僕とJOEでレコーディングしたやつを、ドラムを打ち込みに変えたりとか途中に出て来るギミックを変えたりしたんですよ。そういう意味では今まで僕がhideで作って来たものが全部入っているっていう。

 

──データ、ものすごい量だったでしょ?

 

INA20年前にもともと作った音ネタも今回入っているし、その後改造して入れた音も入っているし、確かに当時これをやろうとしたら大変なことになっていたかもしれない(苦笑)。今はボタン1個押せばすぐ出来ちゃうようなことを1日かけてやっていたからね。しかもそれが正解かどうかわからないっていう(苦笑)。だからオリジナリティが出たと思うんだけど。

 

◆それを93年ぐらいのときに言ってたからね。

この間それに気づいてすげぇなって、未来人だなって

 

──間違った機材の使い方をしたおかげで曲が出来たとか言ってましたもんね。

 

INA:そうそう。「POSE」なんかまさにそうで、違う曲のデータが鳴ってて、「なんだこれ!? カッコ良い!!」ってなってそこから生まれたっていう(笑)。ただ、僕は機械をわかってるじゃないですか? だからこれは出来る、これは出来ないっていうのがわかるんだけど、彼はわからないままただ発想を投げかけて来るから(苦笑)。

 

──相当無理難題を言われたそうで、当時(笑)。

 

INA:もう日々無理難題でしたよ(苦笑)。でも、だからこそオリジナルのサウンドというかおもしろいことが出来たんだなって。当時から随分未来のことをやってましたからね。

 

──インターネットにいち早く興味を示したり。

 

INA:そう。97年に都内4ヵ所のクラブを借りて<MIX LEMONed JELLY>ってやったでしょ? 各会場をインターネットで繋いで。あれもまだ全然インターネットが普及してないときだったから、NTTの人とかに来てもらって大変な騒ぎだったもん(笑)。あと、ソロデビューした頃にレコード会社の人と飲んでて、「いつまでメイクしてやるつもりなの?」って聞かれたときに「いつの間にか俺はいなくなってて、CGの俺がステージ出てやってるんだよ」って。それって今に置き換えると初音ミクじゃないですか?

 

──確かに!!

 

INA:それを93年ぐらいのときに言ってたからね。この間それに気づいてすげぇなって、未来人だなって。

 

──僕が強烈に覚えてるのが、『Ja,Zoo』完成直前、98429日に彼にインタビューをして、おそらくそれが雑誌としての最後のインタビューだったんですけど、その中で“チャートの中からチャートを変えたい”って言ってて。

 

INA:ああ。ちゃんとヒットチャートに入るような曲を作っていながら新しいサウンドとかアプローチを取り入れて、ていうね。

 

──ポップさとハードさ、キャッチーさとマニアックさの融合というか。

 

INA:うん。「好きなことを勝手にやるのは誰にでも出来ることだから、ちゃんとみんなに解るものを作ろう」っていうのはずっと言ってた。

 

──結果その通りになりましたもんね、今の日本の音楽シーン。

 

INA:そうだよね。そこは僕も今回、クラシカルのやつ(8/28同時発売の『hide TRIBUTE -Classical SPIRITS-』)も聴かせてもらったけど、改めて感じましたよ、やっぱいい曲書いてたんだなって。

 

──ヴィジュアル系アーティストがhideの曲をカバーした『Visual SPIRITS』(hide TRIBUTE /Ⅲ)は聴きました?

 

INA:うん。いろんなアプローチがあったけど、わりとオリジナルに近いアレンジにしてる人が多かったのがうれしかったな。いろいろ試したけど、やっぱ元がいいんじゃないかってなったのかなって思ったりね。

 

 ──トリビュートはこの後も発売されるそうで。

 

INA:今年中にあと2枚ね。“Ⅶ”まで出るから。で、10月には映画『hide ALIVE THE MOVIE』が公開されて。

 

──969月に千葉マリンスタジアム(現・QVCマリンフィールド)で行われた<LEMONed presents hide Indian Summer Special>の模様をメインにしたドキュメンタリー映画ですよね。

 

INA:うん。実はその作業が昨日終わったんだけど、このリミックスが終わって1日空けて映画やって、それが昨日終わって今日でしょ? もう5月ぐらいから休みないんだよね(苦笑)。しかも来年ミュージカルを、2011年にやったやつをまた新しいお話にしてやるんでそれの準備も始ってるし。今年はhide周りのことしかやってないです。

 

──ご自身の活動は一切?

 

INA:プロデュースとかアレンジの仕事はやってるけど、自分で何かっていうのは。まぁでも、ライフワークですから、この人(hide)のことやるのは。最近そういう風に思えるようになって来たんですよ。楽しいからね、この人のやつに関わってると。そういう感じです。

 

インタビュー&文●加藤祐介

 

 

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